発作的にゼーゼーヒューヒューといった音(喘鳴)がして息苦しくなるとともに、せきや痰(たん)が出る症状を不定期に繰り返す病気です。正式には気管支喘息といい、夜間や早朝に出やすいのが特徴です。
慢性的に炎症を起こしている気管が何らかの刺激で発作的に狭くなることによって喘息発作を起こします。原因となる刺激にはチリやダニなどのハウスダスト、タバコの煙、カビ、ストレスなどさまざまですが、原因が分からないこともあります。
発作が起きれば即効性のある気管支拡張薬を吸入しますが、症状が落ち着いても気管の炎症は続いています。放置すると気管が硬く狭くなって元にもどらなくなる恐れがあるため、ステロイド薬などで炎症の改善を図る必要があります。
日本では喘息患者が増加傾向にあり、高齢者を中心に年間約2000人が喘息発作で亡くなっています。小児喘息も増えており、特にアレルギーやアトピー性皮膚炎の子どもは発症のリスクが高まります。ただ、喘息でなくても喘鳴を伴うよく似た症状が出ることがありますので、しっかりした診断が必要です。
いびきは、狭くなった喉(のど)が呼吸時に通る空気によって振動することで出る音です。特に眠っているときは筋肉が緩んで喉が狭くなりやすいのでいびきをかくのです。肥満や飲酒のほか、扁桃腺が腫れたときや口蓋垂(のどちんこ)が大きい場合、鼻炎や風邪で鼻が詰まっている場合などもかきやすくなります。
扁桃腺炎や風邪の場合は治ればいびきも治まりますが、問題なのは、肥満などが原因で睡眠中に無呼吸状態を繰り返す睡眠時無呼吸症候群のときです。慢性的な睡眠不足から日中に眠気に襲われて集中力がなくなったり起床時に頭痛が現れたりするほか、高血圧や心筋梗塞のリスクが高まります。早めに診察、治療を受けましょう。
「いびき外来」を掲げている耳鼻科がありますが、いびきが極端にひどいときや睡眠時無呼吸症候群の場合は呼吸器内科を受診するのがいいでしょう。
昼夜逆転の生活をしていたり寝不足であったりしたら、日中に眠気を感じるのは当然です。こうした一時的なものに限らず、日本人は慢性的に睡眠不足の傾向があり、自分ではよく寝たつもりでも睡眠不足に陥っている人が多いのが現状です。慢性的な睡眠不足は休日にいわゆる「寝だめ」をしても解消しません。生活習慣の見直しが必要です。
日中の眠気は、病気が原因のこともあります。多いのが睡眠時無呼吸症候群です。睡眠中に繰り返し無呼吸状態になるもので、眠りが浅くなります。
また、ナルコレプシーといって、発作的に耐えきれない眠気に襲われて、食事中でも眠ってしまう睡眠障害があります。まだあまり知られていませんが、日本人には特に多く、600人に1人程度の患者がいるとみられています。運転中に襲われると事故につながる恐れがありますから、早期の診断治療が必要です。
このほか、治療薬の副作用や水分不足・栄養不足から生じる眠気などもあります。眠気に加えて、体がだるいとかめまいや立ち眩みがするといった状態が続くようなら、呼吸器内科や睡眠医療センターなどを設置している病院を受診するといいでしょう。
せきは風邪のときによく現れる症状ですが、これは、喉(のど)の奥から肺までの空気の通り道の知覚神経が刺激されて出るものです。風邪でなくても、飲み物でむせたり刺激のある気体を吸ったりした場合にも出ます。
風邪のせきは「からせき」と呼ばれ、長期間続く場合はマイコプラズマやクラミジア、肺炎などの感染症の疑いがあります。感染症以外では喘息(ぜんそく)やアレルギー性鼻炎、肺炎が原因となることがありあす。
一方、痰(たん)を伴うせきが3週間以上続く場合は、従来、慢性気管支炎や肺気胸と呼ばれていた慢性閉塞性肺疾患(COPD)や、慢性副鼻腔炎、通年性アレルギー性鼻炎などの可能性があります。COPDの主な原因はタバコです。タバコはからせきも引き起こしますので、せきがひどい人はまず禁煙すべきでしょう。
結核菌という細菌に感染して起こります。結核菌はせきなどで飛沫感染しますので、結核患者は隔離入院が義務付けられています。感染しても結核になる人は10%程度で、多くの人は免疫ができています。ただ、高齢者で抵抗力が弱ったりすると発症する危険性が増します。結核菌はリンパ節や腸、骨などにも感染します。
かつては国民病とまで言われていた結核ですが、ペニシリンなどによる化学療法の普及で激減しました。とはいえ、最近は年間患数は横ばいで、結核に対する認知度が下がったため学校などでの集団感染も起きています。
全身倦怠感やせき、痰(たん)、微熱が続く、発汗、体重減少などの症状が出て死亡に至ることもあります。治療は長期に及びますが、服薬をきちんと続ければ、ほぼ治る病気です。ただし、途中で服薬をやめると薬剤耐性結核となって薬が効かなくなってしまいますので、根気のよい取り組みが必要です。
空気中から気道に入ってきたほこりや菌、ウイルスなどは気道内の粘液にからめとられて体外に出されます。これが痰(たん)です。多くの場合、せきで痰を出そうとします。健康であっても痰は出ているのですが、この場合はほとんどが水分で、無意識に飲み込んでいるので気づかないだけです。
喫煙歴の長い人や喘息では常に痰がからむこともありますが、痰に血が混じる(血痰)ときは肺がんや肺結核、気管支拡張症、肺炎などの疑いがあります。単に鼻血が混じっただけのこともありますが、濃い色の血痰が出たり血痰が続いたりするようだと検査してもらうべきです。
また、黄色や緑色の痰が出ることもあります。白血球などが体内に侵入してきた菌と戦った残骸であることが多いのですが、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や気管支拡張症なども考えられます。長く続くようだと、やはり検査を受けた方がいいでしょう。
痰がからんだときは水分を多くとるほか、多くの場合、ハッフィング法といって大きく息を吸い込んで小刻みに勢いよく吐き出す方法で排出することができます。
息切れは呼吸をするのに努力を要する状態をいいます。健康な人でも山登りや激しい運動をしたときは息切れがしますが、これは体が酸素を求めているためです。
階段や坂道を上った程度の運動で息切れする場合は、呼吸器の病気や心不全などの可能性があり、貧血や赤血球が不足するなどして血液の酸素を運ぶ能力が低下していることも考えられます。
慢性的に息切れがする場合に多いのが慢性閉塞性肺疾患(COPD)です。慢性気管支炎や肺気胸と呼ばれていた病気の総称で、気管支が炎症を起こして狭くなったり肺胞が潰れたりして酸素の取り入れ量が少なくなります。また、間質性肺炎の場合も肺胞の壁が壊れて酸素をうまく取り込めなくなります。
息切れを起こす病気はほかにもありますので、日常生活で息切れを感じやすくなったら呼吸器内科を受診してください。また、COPDの原因の8割は喫煙とされますので、禁煙は必須といえます。
アレルギー性疾患の一つで、植物の花粉が鼻や目の粘膜を刺激してくしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみを引き起こします。日本で多いのはスギ花粉症ですが、ヒノキやブタクサ、マツなどに加えてイネ科の植物の花粉なども原因となります。
花粉症患者は近年増加傾向にあります。戦後全国に植林されたスギが成長して大量の花粉を飛散するようになったことに加え、排気ガスや大陸からのPM2.5などによる大気汚染、衛生環境がよくなって免疫が十分につくられず、少しの刺激で反応が出てくるようになったことなどが、原因として指摘されています。
花粉症発症を防ぐためには、花粉の飛散が多い時は外出を控え、洗濯物を室内干しにする、帰宅時に服や髪の毛に付着した花粉を落とす、ハウスダストやダニを排除するなど室内環境をきれいにすることなどが効果的です。
薬物治療では、抗ヒスタミン薬やステロイド薬などの投与のほか、スギ花粉症に対する舌下免疫療法が注目されています。スギ花粉を原料としたエキスを含む錠剤を舌の下に含み、体をスギ花粉に慣らすことで発症を抑えるものです。効果が出るまでに時間がかかりますから、翌年のスギ花粉シーズンに向けての対策と心得ておくといいでしょう。
細菌やウイルスに感染して肺に炎症を起こす病気です。日本人の病気による死亡数でがん、心疾患に次いで第3位です。肺炎で最も多いのが肺炎球菌によるもので、インフルエンザの合併症としてもよく見られます。
発熱やせき、痰(たん)、胸の痛み、息切れなどのほか、疲れやすかったり、発汗、腹痛、吐き気などが出たりします。重症の場合は呼吸困難を伴います。ただ、高齢者の場合、初期には症状を自覚しないこともあります。
治療は病原微生物を調べたうえで、抗菌薬を用いますが、日ごろからバランスの良い栄養摂取に務めるとともに、適度な運動、タバコを吸っている人は禁煙を心がけるようにしてください。インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンの接種も予防に効果的です。
慢性閉塞性肺疾患といい、かつて慢性気管支炎、肺気胸と呼ばれていた病気の総称です。有害物質に長期間さらされて起きる気管支や肺の炎症疾患で、原因の8割は喫煙とされます。
中高年に多く、40歳以上では罹患者が8.6%と推計されています。気管支では炎症が起きて細くなり、肺ではブドウの房状の肺胞が潰れ、酸素の取り込みや二酸化炭素の排出量が少なくなります。このため、息切れがしやすく、せきや痰(たん)が出ます。
治療の基本は禁煙で、呼吸訓練や栄養療法、運動療法を併用することもあります。薬物療法の中心は気管支拡張薬で、重症の場合は吸入ステロイド薬も用います。
鼻からのどの奥までの上気道が狭くなって、睡眠中に無呼吸を繰り返す病気で、さまざまな合併症を起こします。女性より男性がやや多く、男性では40~50代、女性では閉経後に増えます。
上気道が狭くなる最も多い原因は肥満ですが、肥満でなくても、扁桃腺肥大や鼻中隔湾曲で鼻の中の空気の通りが悪いことや、あごが後退していたり小さかったりするのも原因になります。
いびきや夜間の頻尿、日中の眠気、起床時の頭痛などの症状が出、高血圧や心筋梗塞、脳卒中を起こすリスクが3~4倍に高まるとされます。
治療ではCPAP(シーパップ)が効果的です。睡眠中にマスクを装着して空気を送り込み、その空気圧で気道を広げる装置です。下あごを前方に移動させるマウスピースもあります。いずれも根本治療ではありませんので、生活習慣を見直し肥満解消を図る必要があるでしょう。
胸の内側の胸膜に包まれた胸膜腔にたまる液のことです。胸膜腔には常時少量の胸水がたまっていますが、毛細血管から水分がしみ出しやすくなったり、血液中のたんぱく質などが減ったりすると、その量が増えます。
前者を滲出性胸水といい、細菌性肺炎や結核性胸膜炎、膠原病などで起こります。後者は漏出性胸水と呼ばれ、最も多くみられるのが心不全で、肝硬変やネフローゼ症候群などでも胸水がたまります。
胸水がたまると胸の痛みや息切れ、せき、しゃっくりなどが出ます。胸水を取り除くには胸膜腔内に管を入れて吸い出す方法などがありますが、根本的には原因となっている病気の治療が必要です。
タバコはがんや心疾患をはじめさまざまな病気の原因になったり罹患リスクを高めたりすることが分かっています。しかし、喫煙者の多くはタバコに含まれるニコチンへの依存状態になっているため、個人の意思で禁煙するのは難しいのが実情です。そこで、通院して医師の指導の下、禁煙に取り組むのが禁煙外来です。
禁煙外来は2006年に一定の条件に当てはまれば健康保険が適用されるようになり、設置する病院が増えています。
治療には禁煙補助薬が使われ、内服薬と貼付薬があります。禁煙補助薬は禁煙に伴うイライラなどを抑える効果があります。禁煙外来では医師の指導で喫煙量に合わせた治療が段階的に行われるため、市販薬を使って個人で行うよりも持続し、禁煙を達成する確率が高くなっています。